患者さんエピソード~○○病院温泉へようこそ♡~

患者さんエピソード~○○病院温泉へようこそ♡~

「私はお風呂が大好きなの。あっつい風呂ね!」
そう話す受け持ちのAさんは70歳代の小柄な女性。いつもニコニコ笑っている可愛らしい方でした。

そんなAさんですが、ガンの治療のため、突然の長い入院生活が始まります。
治療後には、お風呂に入れない日が1週間続きました。外仕事のあとは、毎日熱々のお風呂に入ることを日課にしていたそうです。

お風呂好きなAさんにとって、何よりも楽しみなお風呂のない生活は、きっと辛いものだったでしょう。

治療やリハビリの後に、汗をかいた髪を鏡に写し、「あらあら、やーね。みっともないわね……」と、少し悲しそうに笑っていました。

介助量が多い方だと、病院では安全・安心を優先した、全身介助浴を検討することがよくあります。
しかし今までひとりでゆっくり入浴し、自分の事は自分でやっていたAさんは、寝たままの入浴は嫌だと自ら断っていました。

そんなAさんを見て、「Aさんの自尊心やプライバシーにも配慮しながら、毎日の治療やリハビリだけでなく『お風呂』にゆっくり入ってほしい」「心身ともに回復して気分転換してもらいたい!」そう思った私は、自分の休憩時間を少しプラスして、仕事のスケジュールを調整して時間をしっかり確保。

個室のお風呂を予約してAさんをお誘いします。
車椅子に乗ってお風呂に一緒に向かうAさんは、「わ~、何日ぶりだろう~? 温泉かなあ?」と冗談まじりにニコニコ嬉しそうに笑っていました。

私は、「そうですよ! 今日はAさんのために○○病院温泉にご招待させていただきます! どうぞごゆっくりリラックスしてくださいね~!」とお返事しました。


患者さんエピソード~○○病院温泉へようこそ♡~

個人浴では、体を動かすことが億劫だと言っていたAさんが、いつも以上に自分のことは自分で行い、体も自分で洗っていました。

やりたいことを自分の意思でやる!
これこそがリハビリなのだと痛感。

背中を洗わせていただき、Aさんがお風呂に浸かってからは肩をマッサージし、思い出話を聞きます。

Aさんが「あー気持ちいい~!極楽だわ~!」と目をつぶり、とても嬉しそうな顔で呟いていました。
Aさんの肩を揉んでいると、長靴を履いた私も、汗をかきながら一緒に入っている気分。

日常の趣味やささいな生活の時間の有り難さを実感しました。Aさんのあの時の笑顔は一生忘れられません。
Aさん、ありがとうございました!


HAPPYLAB研究員より

大好きなお風呂に一週間も入れなくなったAさん……。
「温泉」に入ったAさんは、きっととびきりの笑顔を見せてくださったと思います!
リラックス方法はひとりひとり違うけど、こんな風に喜んでもらえたら嬉しいですよね♪

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